撤退の春

The Season of Withdrawal



規制市場への参入を自由化して,競争活発化を目指した「規制緩和」であったが,懸念されたように鉄道事業からの撤退ばかりが目につく。この春は開業11.3km,廃止62.8kmで,差し引き鉄道営業キロは51.5kmのマイナスとなる。

鉄道業は規制産業として,平均費用価格による原価補償と撤退規制がセットで適用されて来たが,この場合「適正原価」の範囲が曖昧で,費用節減の誘因が働かないことが問題であった。競争導入は必要だが,問題は鉄道業が固定費用の大きな収穫逓増産業であり,限界費用による競争的な価格形成では必然的に赤字になる点にある。特に比較的需要の少ない路線では,鉄道は概ね限界費用のみで参入できるバスに比べて著しく不利である。

地方における鉄道維持には,固定費用と可変費用を分離し,前者を公的に負担する二部料金制(≒上下分離方式)の導入が検討されるべきだが,この目的に自動車諸税を活用することは現実的な選択であろう。可変費用すら賄えない路線の撤退は必要だが,多くの鉄道が要求される設備更新に対応できないことを廃止理由とする現状は,「インフラ補助」の有効性を示唆する。

3月18日開業:
  • 仙台空港鉄道(7.1km)

    3月19日開業:
  • 大阪モノレール彩都線(4.2km延伸)

    4月1日廃止:
  • くりはら田園鉄道(25.7km)
  • 鹿島鉄道(27.2km)
  • 西鉄宮地岳線(9.9km短縮/20.9km)
  • E721 on Track 3, Sendai Station
    KD-952, Hosokura Station
    仙台駅3番線切欠きホームに停車中の,E721系500番台仙台空港線試運転列車(仙台13:56発→14:57着)に群がる一団。3月18日~31日の14日間のみ「仙台空港→細倉マインパーク前」の経路が可能になるが,宮城県内の鉄道営業キロは,2015年に予定される地下鉄東西線13.9kmが開通しても,この14日間のレベルに復することはない。(2007.2.27) かつての終点,細倉の旧駅舎を通過して細倉マインパーク前に接近するKD-952号。細倉鉱山閉山に伴い1993年に旧栗原電鉄を第3セクターに移行し,さらに電化廃止に伴い1995年にくりはら田園鉄道に改称した。県からの運行補助金カットに伴い,第3セクターとしての運営は13年で終止符を打つ。(2006.8.27)
    (3/3/2007)

     公共料金Q&A (内閣府)