Steel City -- Pittsburgh, PA

日本製鉄によるUS Steelの買収が,大統領選で政治問題化したことは不幸だが,情勢分析が甘かったとも言える。どこの国でも「経済安全保障」は「経済合理性」と対峙する概念として用いられるが,要は確率に対する考え方が重要だろう。保護主義に走って貿易利益を享受できなければ,結局国民全体の厚生は低下する。たとえば東京への一極集中が経済効率的に合理的だったとしても,全ての人的・経済的資源を東京圏に集めれば,大震災による壊滅的被害を免れない。要は震災リスクを低く見る正常化バイアスが,企業経営者や政治家の間で支配的であり,冷静なリスク評価を遠ざけているとも言える。この場合,買収による安全保障上のリスクを過大に捉えることは,US Steelの倒産や撤退のリスクを低く見積もることに等しく,典型的なRust Belt都市であるPittsburgh都市圏に重大な損害をもたらす可能性が大きい。19世紀末の米国では製鉄業は花形産業であり,US Steelの創始者の1人であるAndrew Carnegie (1835-1919)は,Carnegie HallやCarnegie-Mellon大学等の文化施設にも名を残している。US Steelが本拠地から撤退したら,Steel Cityという愛称や,アメフトのPittsburgh Steelersはどうなるのだろう? (Photographed in Nov. 2019)
Pittsburgh LRT有数の乗降客数を擁する,Steel Plaza駅の出入口。後方のレンガ造りはWilliam Penn Hotel。 Steel Plazaの呼称はUS Steelの本社に因むとは思ったが,写真を撮っていなかった。Google Mapからは,左写真の右側に位置することが解る。
Steel Plaza駅は3面4線の拠点駅で,左側の2線はUnion Sta.(Penn Sta.)に通じるが,2007年9月以降定期運行を失っている。 Union Sta.からはEast Buswayを走るBRTが発着するが,鉄道駅としてはAmtrak1日2往復の発着に留まり,旧本屋は賃貸住宅に転換された。
Pittsburgh対岸のMt.Washingtonから,石炭を下す為に敷設された古風なInclineが2本残る。その1本,1870年開業のMonongahela線山麓駅。 Monongahela川と1883年竣工のSmithfield St.橋を隔てて見る市街中心部。インクラインは複線交走式で,5'(1524mm)ゲージを採用する。
(9/26/2024)