Mr. Trump should take a primary course in International Economics


WTO Headquarters, Geneva, CH.(Mar. 2025)
Trump大統領が,現地4/2に発表した「相互関税」だが,その算出式:
Δτi=(Xi-Mi)/(εφMi)
ここに,Xiはi国への輸出,Miはi国からの輸入,εは輸入品の価格弾力性,φは関税の輸入品価格への転嫁率。
Δτiはi国の関税率と称するが意味不明だ。ε=-4,φ=0.25と仮定されているので,Δτi=(Mi-Xi)/Mi=貿易赤字÷輸入額という単純な式になるが,国によって輸出財の構成は異なり,財ごとの価格弾力性も異なるから,全ての国について一律にεφ=-1は乱暴だ。結局ΔτiMi=Mi-Xi,つまり貿易赤字を丁度埋め合わせる追加関税収入を計算しているだけだ。実際の関税率や非関税障壁とは無関係で,これが"reciprocal"(相互的)であろうはずがない。

そもそも1929年の大恐慌以来,保護貿易政策やブロック化が進められた結果,経済的利害が衝突して大戦に至った過去の経緯に対する考慮がなく,1947に署名され,翌年から発効したGATTから,それを包摂して95年に設立されたWTOに至る貿易自由化の営みを断ち切るものである。第1期Trump政権でも,多国間協定より2国間協定を好む傾向があり,WTOの紛争解決機能は,上級委員会の選任に関する米国の反対により,2019年以来機能不全に陥っている。今回の「相互関税」は2国間ですらない,unilateral(一方的)なものになっている。

各国には資源付与量の差があるから,(相対的)得意分野の財を生産し,お互いに交易することで貿易利益が得られることは,Hecksher-Ohlinモデル等から周知の事実である。各国が全ての財を必要量生産するなら,輸出入は必然的にゼロになるが,Trump大統領が求めるのは,そのような閉鎖経済だろうか。しかも現代は,各国がサプライチェーンを通じて複雑に連携しているから,特定の国(たとえば中国)の産品に高関税を掛けると,自国産業へのreflectionが大きい。たとえばアメリカから部品を中国に輸出して,iPhoneを組み立てて米国に輸入する場合に,最終財の価格に対して高関税を掛けると,それに含まれるアメリカ製の部品にも高関税を掛けることになるから,本来はinvoice等で税額控除措置を講じる必要がある。製品に含まれる付加価値を遡って各国に帰属させる計算は可能だが,そんな面倒な計算をTrump関税が想定するはずがない。

さらに国際収支=経常収支+資本収支+外貨準備増減であり,これは原理的に0になる。経常収支=貿易収支+サービス収支+所得収支+経常移転収支であり,外貨準備増減を無視すれば,経常収支の赤字=資本収支の黒字になるから,貿易収支だけに拘る必要は無い。日本の場合,貿易収支が赤字でも所得収支でカバーできているが,アメリカの場合,貿易赤字が巨大であり,所得収支は黒字でも経常収支の赤字が続いている。しかし貿易赤字は,米国債や株式購入による資本流入でカバーできているため,経済が破綻する訳ではない。ただ通常,貿易赤字は為替を通じて調整されるが,米ドルが国際通貨であるために,貿易赤字や通貨供給増がドル安に直結しない点が,他の国とは異なる。


The White House as seen from the Washington Monument.(Jan. 2024)

Trump Tower on Fifth Ave., New York, NY.(Jul. 2016)

Trump Store inside Trump Tower, New York, NY.(Jan. 2024)
  • Fact-Checking All of the Mysteries Surrounding Donald Trump and Penn
        └  Google翻訳 (Philadelphia Magazine, ©2019)
  • Wharton School, UPenn
  • (4/4/2025)